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第一部 第27話 縋る声

Author: 葉月うみ
last update publish date: 2026-06-14 14:00:12

「香油なら、他の侍女も触れます。私は奥様にお仕えしていただけで、瓶を整えることも、支度を手伝うことも、侍女として当然のことでございます」

 リディアは、まだ侍女の礼儀の形にしがみつこうとしていた。

「他の侍女も、瓶に触れることはあったでしょう。けれど、特注の香油を受け取りに行った者は限られる」

 私は、控えていたアウルの従者へ視線を向けた。彼が静かに進み出て、封をされた薄い帳面と、小さな紙片を差し出す。私はそれを受け取らず、ロザリー夫人の家令へ示した。ここで私がすべてを握っているように見せるより、モンフォール家の場として明かされた方がよい。

 家令が封を開き、低い声で読み上げた。

「白薔薇に青い薬草を合わせた特注香油一瓶。支払い名義、ドラクロワ公爵家嫡男セドリック・ドラクロワ様。受け取りは若い侍女。紋章を外した小箱で持ち帰りを希望。特徴は、灰色の外套、白い手袋、栗色の髪を結い上げた女」

 リディアの白い手袋が震えた。

「それだけで私だと決めつけるのですか。灰色の外套など、いくらでもご

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     重い扉が閉じたあと、広間にはしばらく誰の声もなかった。 客人たちは互いの顔を見合わせている。自分たちが今、殺人未遂の告発を目撃したのか、それとも貴族の夜会にふさわしくない醜聞に巻き込まれたのか、判断しかねているようだった。誰かがこの夜の出来事をそのまま口外すれば、モンフォール家も、招かれた客たちも、無傷では済まない。 その沈黙の中で、ロザリー夫人が静かに扇を開いた。「皆様、いかがでしたでしょうか。今宵は、ささやかな趣向として、ミステリーの演劇をお楽しみいただきました。皆様にも、ご出演者として少しばかりお力添えをいただいた形になりましたわね

  • 死に戻り令嬢は冤罪を覆し、幼馴染の王子に溺愛される 〜銀の令嬢の甘く危険な事件簿〜   第一部 第25話 罠を罠で返す

     私とアウルは、先に広間側へ戻った。彼は私の背を支えたまま、何事もなかったように人の流れの端へ立つ。私は扇を開き、顔の下半分を隠した。心臓は速い。けれど、視線はぶれていなかった。 広間では、セドリックが数人の客のそばにいた。 茶色の髪は乱れていない。灰色の瞳は心配そうに奥の間の方へ向けられている。けれど、彼が口を開いた時、その声は周囲の耳へ届くよう、ほんの少しだけ低く整えられていた。「先ほど、アストレア・ステラート嬢がロザリー夫人と話していたのを見た」 私の指先が、扇の骨を押さえた。「何か杯を勧めていたように

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